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リコリスの旅81話【第三章】 新しい味:スジャンマ
ソルスセイム2日目です。
軽く街の人の紹介と言うか顔合わせ回ですね。
~ソルスセイム・宿屋レッチング・ネッチ・コーナークラブ~
リコリス「……んあ、いつの間にか寝てたのか……晩御飯教えてもらい損ねた。」
手早く身なりを整えて広間へと向かう。
ゲルディス「おや、昨日はぐっすり寝ていたようだね。ゆっくり疲れはとれたかい?」
リコリス「ああ、すまない。夕飯を食べ損ねてしまった。」
ゲルディス「いいさ、朝飯食べるか?」
リコリスは頷く。しばらくして良い匂いのする覚えのあるものが運ばれてくる。
リコリス「あれ?これはスカイリムでもあるよね?」
運ばれてきたのはスカイリムでもよくある鶏がらスープだ。
ゲルディス「ああ、ダンマーの料理は夜にゆっくりな。今は食べなれたもののほうがいいだろう。」
リコリス「うん、ありがとう。おっちゃん、いただくよ。」そう言ってゆっくりと啜る。
温かくて美味しい。
ゲルディス「ここではしばらく逗留するんだろ?ちょっと相談があるんだが。」
スープを食べながらゲルディスの話に耳を傾ける。
ゲルディス「ここに泊まってる間だけでいいんだが、ここを手伝ってくれないか?その間は宿代はサービスしよう。」
リコリス「いいのかい?一応この街の外にも旅に出る予定なんだけど……。」
ゲルディス「ああ、帰ってきて泊まってる間でいい。帰ってきてすぐ働いてくれとは言わんさ。」
リコリス「じゃ、じゃあ、願ったり叶ったりだぜ。あんまりお財布も余裕ないしな。」
ゲルディス「決まりだ、ダンマー料理もその時教えてやろう。」
ここでの動きも大体決まって、自然と心踊る。
ゲルディス「今日はどうするつもりだ?」
リコリス「今日は街の中を見て回ろうと思っているよ。どんなものがあるか楽しみだ。」
ゲルディス「おお、それはちょうどいい。ちょっと最初の仕事を頼みたい。実は新作のスジャンマを作ってみてな。新しい成分をいくつか加えてある。そいつが極上の味を生むんだ。」
すじゃんま?
リコリス「なんかよくわからねーが、それがすげーもんなんだな!」
ゲルディス「え?ああ、そうだな。あとは新作の完成を告知するだけで、店は客で一杯になる。そこであんたに宣伝してもらいたいんだ。」
リコリス「宣伝?どうすればいいんだ?」
ゲルディス「このお試し用のスジャンマを持って、宣伝してきてくれ。全部配り終えたら、報酬を出そう。」
あと目立つようにこれに着替えてくれ、と奥からなにやら引っ張り出す。
・
・
・
リコリス「い、いや。確かに目立つだろうけどなんでこんなものが……というか何でこんな格好を……。」
ゲルディス「うむ、似合っているぞ。輸送船で以前来た客が着ていたものだが、いらなくなったと言って置いていってな。処分するにもいい生地を使っているもんだからもったいなくてそのまま置いていたんだ。」
リコリス(なんでこんなの着てたんだ……?置いていく意味も……。)
ゲルディス「ま、そんな感じだ。よろしく頼むぞ。」
・
・
・
リコリス「レ、レッチングネッチの新作スジャンマですよ~。いかがですか?」
この町の鍛冶屋らしいノルドに声をかける。流石に恥ずかしい。
グローヴァー・マロリー「完ぺきじゃねえか!ちょうど飲みに行こうかと思ってたんだ。手間を省いてくれてありがとよ。」
渡したスジャンマを一気に飲み干し、爽快な顔でこちらに目を向ける。
グローヴァー・マロリー「お前さん見慣れない顔だな。冒険者かい?」
リコリス「ああ、ここに逗留する間、レッチングネッチの主人の手伝いをしてるんだ。今は新作のスジャンマの宣伝だ。」
グローヴァー・マロリー「おおそりゃちょうどいい。俺からも少し頼みがあるんだ。クレシウス・カエレリウスという老人を見なかったか?あのもうろく爺さんが、また俺のつるはしを持ってっちまったんだ!」
リコリス「つるはし?ただのつるはしでそんな血相を変えることなのか?」首をかしげる。
グローヴァー・マロリー「いやいやいや!お前らの知ってる普通のつるはしじゃなくて……、古代ノルドのつるはしの話をしてんだよ。こいつは簡単に手に入る品じゃねぇんだ。」
骨董品なのかな?そこらへんのことはよくわからんが、宣伝の途中に会えたらと、とりあえず了承する。
グローヴァー・マロリー「クレシウスを見つけたらつるはしを返せと言っておいてくれ。手間賃は払うからさ。」
手を振って別れる。ノルドは怖そうな顔立ちも多いが結構優しい。
・
・
・
リコリス「新作スジャンマ~新作スジャンマだよ~。いかがですか?」
豪華な服に身を包んだダンマーの夫人に声をかける。
ティリス・セヴェリン「もちろん、いただくわ。それ以上にやりたい事もないしね。」
なかなかおだやかな女性だ。スジャンマを飲む姿も洗練されている。
リコリス(オレもこんな大人の女性になれるかなぁ……。)
・
・
・
街を見て回っていると、見知った顔を見つける。
リコリス「す~じゃんま~、すじゃーんまっ。いかがですかー、エイドリルさん。」
エイドリル・アラーノ「んん?ああ、キミか。いや、遠慮しておこう。思考がにごると困るからな。レッチングネッチで仕事か、私は酒は飲まないが、料理を学ぶには一番だ。がんばってくれ。」
リコリス「さんきゅー!エイドリルさんもがんばってな。」
・
・
・
リコリス「すっじゃんま~、いりませんか~。」
いろいろな品物を前に店を開いているダンマーの男に声をかける。
ガーリン・イエンス「ゲルディスの考案した飲み物なら、喜んでいただくよ。」
リコリス「何を売ってるんだ?食材?」
ガーリン・イエンス「ああ、スカイリムからの船の品物や、ここで取れたものを売ってる。私も妻も、レイヴンロックの人々のお腹が一杯になるよう全力を尽くしているよ。」
リコリス「へぇ、色々なものがスカイリムからも来てるんだなぁ。また色々見せてくれ。」
ガーリン・イエンス「腹が減った時はいつでも立ち寄ってくれ、食べ物をたっぷり用意して待っているぞ。」
・
・
・
リコリス「レッチングネッチのしんさく~、新作だよ~」
またその近くの露天を開いている男に声をかける。
フェシス・アロール「ケルディスはこんなところで時間を無駄にしてないで、こいつを瓶に詰めて本土に送り込まなくちゃ……、彼の飲み物は最高だよ。ありがとう。」
リコリス(このスジャンマってのそんなに美味いのか。)「あんたは雑貨屋なのか?」
フェシス・アロール「ああ、生活用品が必要な時は、どこで私をつかまえればいいか分かるな?いつでもこい。」
へぇ、どんなのがあるんだろ、と覗いていると、後ろに大きな気配。
・
・
・
リコリス「な、なんだこの生き物!?」
狩人のドレデナ「あら、見ない顔ね。スカイリムから来た人ね、シルトストライダーは初めて見る?」
ファルスカールでセロさんが着ていたような鎧に身を包んだ女性が優しげに声をかけてくる。
リコリス「しるとすとらいだー?」
ドレデナ「ええそうよ、この子はシルトストライダーの子供のダニーというのよ。」
リコリス「こ、これで子供なのか?そこらのトロールよりでけぇ……。」背に鞍がついているところを見ると乗って移動するのだろうか?
ドレデナ「シルトストライダーはモロウウィンドに住む大きな生き物でね。とっても頑丈で大人しい優しい生き物なのよ。モロウィンドでは乗り物として私達を助けてくれていたのだけれど……。」
今では火山の噴火で個体数を減らしてしまっていてね、と続ける。
リコリス「そっか、最初怖がってごめんな。」そういってそっと撫でる。硬い甲殻だが暖かみを感じる。
ダニーは嬉しそうに鳴き声をあげる。
・
・
・
「スジャンマいかがですか~、美味しいですよ~。」
街では珍しいオークの男に声をかける。大分手馴れてきた気がする。
モグルル「うるさいぞ、そんな泥水、井戸にでも流すんだな。」
そう言ってこちらの肩を突き飛ばしてくる。当然、こちらは鍛え方が違う。流石によろけはするがこけはしないですんだ。
リコリス「て、てめぇ!なにしやがる!」
モグルル「お前が誰だか知らんし、余所者は商売の邪魔だ。耐えられん、どっか行け。」
リコリス「上ッ等だコラ!てめぇいい加減にしやがれってんだ!」
食って掛かろうとすると、間に割り込む影。どうやらドロヴァスの護衛のよう。
とはいえこちらも引けない。白黒つけてやると、思ったところでエイドリアルの顔を思い出す。
リコリス「ちっ、ここで騒ぎ起こしたくねぇしな。ばーかばーか!」
そう言って睨み合いを脱する。
・
・
・
リコリス「スジャンマ~すじゃんま~休憩にスジャンマはいかがですか~。」
露天で錬金に勤しむ女性に声をかける。
ミロール・イエンス「次の薬にこれを混ぜてみるべきね……、一体何がおこるかしら!」
リコリス「え?いや、飲んで欲しかったけど……まぁ人それぞれか……。」
早速なにやら怪しげな薬を調合し始めるミロールからそさくさと撤退する。
・
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・
その後も何人かに声をかけながら、街を見て回る。
外から来るものは珍しいのか、皆好意的に話をしてくれる。いい人が多い。あのオーク以外は!
エイドリアル「ああ、ようやく見つけた。君に用がある。」
そのままスジャンマを何人かに配った頃、エイドリアルがこちらを見つけて声をかけてきた。
リコリス「ん?スジャンマのむかい?」
エイドリアル「まだ仕事中だ。用はそれじゃない、モーヴァイン評議員が是非キミに会って見たいとおっしゃっている。顔を合わせておけば、今後何かと動きやすいだろう。」
リコリス「ええ、で、でも今仕事中だし……というかそんなお偉いさんに会うような服何も持ってないぜ?」
エイドリアル「いやいや、モーヴァイン評議員は優しく器の大きなお方だ、それで怒りはしないさ。あ、それと評議員はゲルディスのスジャンマが大好物でな、その新作を持っていけば喜ばれるだろう。」
リコリス「うん、わかった。挨拶してくるよ、サンキューな!」
エイドリアルは道を指し示し、失礼のないようになと自分の職務に戻っていった。
ついて来てくれないのは不安だが、会ってまだ2日目だがこちらへの信頼と、評議員の人柄を信じているのだろう。
裏切るわけには行かない。
・
・
・
宣伝代わりに自作のスジャンマの歌を歌いながら歩く。
エイドリアルの言っていた建物はここか。
扉の横の衛兵に挨拶をして中に通してもらう。
・
・
・
リコリス「おじゃましまーす。お呼ばれたリコリスですがー。」
レリル・モーヴァイン「おお、呼びつけてすまない。レリル・モーヴァインだ。レドラン家の評議員をしている。」
優しげな口調でこちらの緊張をほぐしてくれる。
リコリス「あ、ゲルディスさんの新作のスジャンマいかがですか?」
モーヴァイン「おお、ゲルディスのおかげでいつも前向きでいられるよ……視界はぼやけ気味だがな。ありがとう。」
美味しそうに飲み干し、こちらに笑いかける。
モーヴァイン「レドラン家を代表して、レイヴンロックの評議員である私が歓迎しよう。ここで不便は……まぁ不便だらけかもしれないが、レイヴンロックへの貢献はどんな形であれ、大変ありがたい……もちろん、相応の報酬を支払う用意もある。何か質問は?」
ずっと疑問だったことを聞く。
リコリス「えーっとその、レドラン家っていうのはなんなんだ?」
モーヴァイン「レドラン家の名を知らんのか?我らは最強の大家であり、モロウウィンドを統治する議会の長を務めている。」
リコリス「議会?首長とは違うのか?」
こちらの無知に怒りもせず優しく教えてくれる。
モーヴァイン「ここはスカイリムではないのだ、旅人よ。モロウウィンドは何千年もの間、武力と影響力のあるダンマーの大家の一団が支配している。五大家からなる議会が統治を担っている。テルヴァンニ、ドレス、サドラス、インドリル、そしてレドランの各家だ。」
リコリス「それでレドラン家が議会の長を努めてるってことか。」
モーヴァイン「そうだ、議会には他に四つもの大家がいる。誰かが有象無象をまとめないとな。我らは戦い、知見、そして先祖の栄光の点でぬきんでているからこそ、議会を率いているのだ。」
頭をかく。
リコリス「な、なんだか複雑だな。大変なんだなぁ。」
ははははと快活に笑うモーヴァイン。
モーヴァイン「他の種族にそう見えてしまうのは無理の無い事だ。もし、詳しく知りたければ、私の蔵書にある歴史書の中から好きなものを持っていくといい。」
リコリス「あ、いや、料理書以外はどうにも読むの苦手で……。」
再び笑うモーヴァイン。
モーヴァイン「そうか、料理の勉強に来た、と言っていたんだったな。何か困ったことがあったら言ってくれ、こちらが困った時その冒険者としての腕を貸してもらえればありがたい。」
それに頷き、屋敷を後にする。
・
・
・
その後も試飲用のスジャンマがなくなるまで宣伝して歩き、宿に帰った。
・
・
・
その夜は新作のスジャンマを飲むためと、『なにやら面白いやつがスカイリムから来て、レッチングネッチに泊まっている』という噂を聞いた客が大勢訪れ、大盛況となった。
そのおかげでリコリスはバイトとして給仕として、注文を聞いたり配膳したりと大忙しだった。
・
・
・
客の注文も落ち着き、それでも酒場の盛り上がりは盛況だ。
やっと落ち着いてカウンターに腰掛ける。
リコリス「つ、つかれた……。」
ゲルディス「いやぁ助かったよ、俺一人ではさばききれなかったかもしれん。ずっといて働いて欲しいくらいだ。」
その言葉に苦笑いで返す。
ゲルディス「おっと、お礼の前に今日頑張ってくれたんだ。特製のスジャンマを奢ろう。」
リコリス「へへ、わりぃな。ずーっと気になってたんだ。皆美味そうに飲んでるからさ。」
(仕事中に飲む人も多いって事はジュースかなんかか?なんの生絞りだろう。)
出されたコップのスジャンマを飲み干す。
・
・
・
その後の事は覚えていない。
・
・
・
完全に酔っ払ったリコリスが服を脱ぎ捨てて、その場で寝ようとしはじめ、沸き立ち盛り上がる客達のなか、慌ててゲルディスと街で馴染みになった女性陣に部屋に連行されていったのであった。
軽く街の人の紹介と言うか顔合わせ回ですね。
~ソルスセイム・宿屋レッチング・ネッチ・コーナークラブ~
リコリス「……んあ、いつの間にか寝てたのか……晩御飯教えてもらい損ねた。」
手早く身なりを整えて広間へと向かう。
ゲルディス「おや、昨日はぐっすり寝ていたようだね。ゆっくり疲れはとれたかい?」
リコリス「ああ、すまない。夕飯を食べ損ねてしまった。」
ゲルディス「いいさ、朝飯食べるか?」
リコリスは頷く。しばらくして良い匂いのする覚えのあるものが運ばれてくる。
リコリス「あれ?これはスカイリムでもあるよね?」
運ばれてきたのはスカイリムでもよくある鶏がらスープだ。
ゲルディス「ああ、ダンマーの料理は夜にゆっくりな。今は食べなれたもののほうがいいだろう。」
リコリス「うん、ありがとう。おっちゃん、いただくよ。」そう言ってゆっくりと啜る。
温かくて美味しい。
ゲルディス「ここではしばらく逗留するんだろ?ちょっと相談があるんだが。」
スープを食べながらゲルディスの話に耳を傾ける。
ゲルディス「ここに泊まってる間だけでいいんだが、ここを手伝ってくれないか?その間は宿代はサービスしよう。」
リコリス「いいのかい?一応この街の外にも旅に出る予定なんだけど……。」
ゲルディス「ああ、帰ってきて泊まってる間でいい。帰ってきてすぐ働いてくれとは言わんさ。」
リコリス「じゃ、じゃあ、願ったり叶ったりだぜ。あんまりお財布も余裕ないしな。」
ゲルディス「決まりだ、ダンマー料理もその時教えてやろう。」
ここでの動きも大体決まって、自然と心踊る。
ゲルディス「今日はどうするつもりだ?」
リコリス「今日は街の中を見て回ろうと思っているよ。どんなものがあるか楽しみだ。」
ゲルディス「おお、それはちょうどいい。ちょっと最初の仕事を頼みたい。実は新作のスジャンマを作ってみてな。新しい成分をいくつか加えてある。そいつが極上の味を生むんだ。」
すじゃんま?
リコリス「なんかよくわからねーが、それがすげーもんなんだな!」
ゲルディス「え?ああ、そうだな。あとは新作の完成を告知するだけで、店は客で一杯になる。そこであんたに宣伝してもらいたいんだ。」
リコリス「宣伝?どうすればいいんだ?」
ゲルディス「このお試し用のスジャンマを持って、宣伝してきてくれ。全部配り終えたら、報酬を出そう。」
あと目立つようにこれに着替えてくれ、と奥からなにやら引っ張り出す。
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リコリス「い、いや。確かに目立つだろうけどなんでこんなものが……というか何でこんな格好を……。」
ゲルディス「うむ、似合っているぞ。輸送船で以前来た客が着ていたものだが、いらなくなったと言って置いていってな。処分するにもいい生地を使っているもんだからもったいなくてそのまま置いていたんだ。」
リコリス(なんでこんなの着てたんだ……?置いていく意味も……。)
ゲルディス「ま、そんな感じだ。よろしく頼むぞ。」
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リコリス「レ、レッチングネッチの新作スジャンマですよ~。いかがですか?」
この町の鍛冶屋らしいノルドに声をかける。流石に恥ずかしい。
グローヴァー・マロリー「完ぺきじゃねえか!ちょうど飲みに行こうかと思ってたんだ。手間を省いてくれてありがとよ。」
渡したスジャンマを一気に飲み干し、爽快な顔でこちらに目を向ける。
グローヴァー・マロリー「お前さん見慣れない顔だな。冒険者かい?」
リコリス「ああ、ここに逗留する間、レッチングネッチの主人の手伝いをしてるんだ。今は新作のスジャンマの宣伝だ。」
グローヴァー・マロリー「おおそりゃちょうどいい。俺からも少し頼みがあるんだ。クレシウス・カエレリウスという老人を見なかったか?あのもうろく爺さんが、また俺のつるはしを持ってっちまったんだ!」
リコリス「つるはし?ただのつるはしでそんな血相を変えることなのか?」首をかしげる。
グローヴァー・マロリー「いやいやいや!お前らの知ってる普通のつるはしじゃなくて……、古代ノルドのつるはしの話をしてんだよ。こいつは簡単に手に入る品じゃねぇんだ。」
骨董品なのかな?そこらへんのことはよくわからんが、宣伝の途中に会えたらと、とりあえず了承する。
グローヴァー・マロリー「クレシウスを見つけたらつるはしを返せと言っておいてくれ。手間賃は払うからさ。」
手を振って別れる。ノルドは怖そうな顔立ちも多いが結構優しい。
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リコリス「新作スジャンマ~新作スジャンマだよ~。いかがですか?」
豪華な服に身を包んだダンマーの夫人に声をかける。
ティリス・セヴェリン「もちろん、いただくわ。それ以上にやりたい事もないしね。」
なかなかおだやかな女性だ。スジャンマを飲む姿も洗練されている。
リコリス(オレもこんな大人の女性になれるかなぁ……。)
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街を見て回っていると、見知った顔を見つける。
リコリス「す~じゃんま~、すじゃーんまっ。いかがですかー、エイドリルさん。」
エイドリル・アラーノ「んん?ああ、キミか。いや、遠慮しておこう。思考がにごると困るからな。レッチングネッチで仕事か、私は酒は飲まないが、料理を学ぶには一番だ。がんばってくれ。」
リコリス「さんきゅー!エイドリルさんもがんばってな。」
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リコリス「すっじゃんま~、いりませんか~。」
いろいろな品物を前に店を開いているダンマーの男に声をかける。
ガーリン・イエンス「ゲルディスの考案した飲み物なら、喜んでいただくよ。」
リコリス「何を売ってるんだ?食材?」
ガーリン・イエンス「ああ、スカイリムからの船の品物や、ここで取れたものを売ってる。私も妻も、レイヴンロックの人々のお腹が一杯になるよう全力を尽くしているよ。」
リコリス「へぇ、色々なものがスカイリムからも来てるんだなぁ。また色々見せてくれ。」
ガーリン・イエンス「腹が減った時はいつでも立ち寄ってくれ、食べ物をたっぷり用意して待っているぞ。」
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リコリス「レッチングネッチのしんさく~、新作だよ~」
またその近くの露天を開いている男に声をかける。
フェシス・アロール「ケルディスはこんなところで時間を無駄にしてないで、こいつを瓶に詰めて本土に送り込まなくちゃ……、彼の飲み物は最高だよ。ありがとう。」
リコリス(このスジャンマってのそんなに美味いのか。)「あんたは雑貨屋なのか?」
フェシス・アロール「ああ、生活用品が必要な時は、どこで私をつかまえればいいか分かるな?いつでもこい。」
へぇ、どんなのがあるんだろ、と覗いていると、後ろに大きな気配。
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リコリス「な、なんだこの生き物!?」
狩人のドレデナ「あら、見ない顔ね。スカイリムから来た人ね、シルトストライダーは初めて見る?」
ファルスカールでセロさんが着ていたような鎧に身を包んだ女性が優しげに声をかけてくる。
リコリス「しるとすとらいだー?」
ドレデナ「ええそうよ、この子はシルトストライダーの子供のダニーというのよ。」
リコリス「こ、これで子供なのか?そこらのトロールよりでけぇ……。」背に鞍がついているところを見ると乗って移動するのだろうか?
ドレデナ「シルトストライダーはモロウウィンドに住む大きな生き物でね。とっても頑丈で大人しい優しい生き物なのよ。モロウィンドでは乗り物として私達を助けてくれていたのだけれど……。」
今では火山の噴火で個体数を減らしてしまっていてね、と続ける。
リコリス「そっか、最初怖がってごめんな。」そういってそっと撫でる。硬い甲殻だが暖かみを感じる。
ダニーは嬉しそうに鳴き声をあげる。
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「スジャンマいかがですか~、美味しいですよ~。」
街では珍しいオークの男に声をかける。大分手馴れてきた気がする。
モグルル「うるさいぞ、そんな泥水、井戸にでも流すんだな。」
そう言ってこちらの肩を突き飛ばしてくる。当然、こちらは鍛え方が違う。流石によろけはするがこけはしないですんだ。
リコリス「て、てめぇ!なにしやがる!」
モグルル「お前が誰だか知らんし、余所者は商売の邪魔だ。耐えられん、どっか行け。」
リコリス「上ッ等だコラ!てめぇいい加減にしやがれってんだ!」
食って掛かろうとすると、間に割り込む影。どうやらドロヴァスの護衛のよう。
とはいえこちらも引けない。白黒つけてやると、思ったところでエイドリアルの顔を思い出す。
リコリス「ちっ、ここで騒ぎ起こしたくねぇしな。ばーかばーか!」
そう言って睨み合いを脱する。
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リコリス「スジャンマ~すじゃんま~休憩にスジャンマはいかがですか~。」
露天で錬金に勤しむ女性に声をかける。
ミロール・イエンス「次の薬にこれを混ぜてみるべきね……、一体何がおこるかしら!」
リコリス「え?いや、飲んで欲しかったけど……まぁ人それぞれか……。」
早速なにやら怪しげな薬を調合し始めるミロールからそさくさと撤退する。
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その後も何人かに声をかけながら、街を見て回る。
外から来るものは珍しいのか、皆好意的に話をしてくれる。いい人が多い。あのオーク以外は!
エイドリアル「ああ、ようやく見つけた。君に用がある。」
そのままスジャンマを何人かに配った頃、エイドリアルがこちらを見つけて声をかけてきた。
リコリス「ん?スジャンマのむかい?」
エイドリアル「まだ仕事中だ。用はそれじゃない、モーヴァイン評議員が是非キミに会って見たいとおっしゃっている。顔を合わせておけば、今後何かと動きやすいだろう。」
リコリス「ええ、で、でも今仕事中だし……というかそんなお偉いさんに会うような服何も持ってないぜ?」
エイドリアル「いやいや、モーヴァイン評議員は優しく器の大きなお方だ、それで怒りはしないさ。あ、それと評議員はゲルディスのスジャンマが大好物でな、その新作を持っていけば喜ばれるだろう。」
リコリス「うん、わかった。挨拶してくるよ、サンキューな!」
エイドリアルは道を指し示し、失礼のないようになと自分の職務に戻っていった。
ついて来てくれないのは不安だが、会ってまだ2日目だがこちらへの信頼と、評議員の人柄を信じているのだろう。
裏切るわけには行かない。
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宣伝代わりに自作のスジャンマの歌を歌いながら歩く。
エイドリアルの言っていた建物はここか。
扉の横の衛兵に挨拶をして中に通してもらう。
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リコリス「おじゃましまーす。お呼ばれたリコリスですがー。」
レリル・モーヴァイン「おお、呼びつけてすまない。レリル・モーヴァインだ。レドラン家の評議員をしている。」
優しげな口調でこちらの緊張をほぐしてくれる。
リコリス「あ、ゲルディスさんの新作のスジャンマいかがですか?」
モーヴァイン「おお、ゲルディスのおかげでいつも前向きでいられるよ……視界はぼやけ気味だがな。ありがとう。」
美味しそうに飲み干し、こちらに笑いかける。
モーヴァイン「レドラン家を代表して、レイヴンロックの評議員である私が歓迎しよう。ここで不便は……まぁ不便だらけかもしれないが、レイヴンロックへの貢献はどんな形であれ、大変ありがたい……もちろん、相応の報酬を支払う用意もある。何か質問は?」
ずっと疑問だったことを聞く。
リコリス「えーっとその、レドラン家っていうのはなんなんだ?」
モーヴァイン「レドラン家の名を知らんのか?我らは最強の大家であり、モロウウィンドを統治する議会の長を務めている。」
リコリス「議会?首長とは違うのか?」
こちらの無知に怒りもせず優しく教えてくれる。
モーヴァイン「ここはスカイリムではないのだ、旅人よ。モロウウィンドは何千年もの間、武力と影響力のあるダンマーの大家の一団が支配している。五大家からなる議会が統治を担っている。テルヴァンニ、ドレス、サドラス、インドリル、そしてレドランの各家だ。」
リコリス「それでレドラン家が議会の長を努めてるってことか。」
モーヴァイン「そうだ、議会には他に四つもの大家がいる。誰かが有象無象をまとめないとな。我らは戦い、知見、そして先祖の栄光の点でぬきんでているからこそ、議会を率いているのだ。」
頭をかく。
リコリス「な、なんだか複雑だな。大変なんだなぁ。」
ははははと快活に笑うモーヴァイン。
モーヴァイン「他の種族にそう見えてしまうのは無理の無い事だ。もし、詳しく知りたければ、私の蔵書にある歴史書の中から好きなものを持っていくといい。」
リコリス「あ、いや、料理書以外はどうにも読むの苦手で……。」
再び笑うモーヴァイン。
モーヴァイン「そうか、料理の勉強に来た、と言っていたんだったな。何か困ったことがあったら言ってくれ、こちらが困った時その冒険者としての腕を貸してもらえればありがたい。」
それに頷き、屋敷を後にする。
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その後も試飲用のスジャンマがなくなるまで宣伝して歩き、宿に帰った。
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その夜は新作のスジャンマを飲むためと、『なにやら面白いやつがスカイリムから来て、レッチングネッチに泊まっている』という噂を聞いた客が大勢訪れ、大盛況となった。
そのおかげでリコリスはバイトとして給仕として、注文を聞いたり配膳したりと大忙しだった。
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客の注文も落ち着き、それでも酒場の盛り上がりは盛況だ。
やっと落ち着いてカウンターに腰掛ける。
リコリス「つ、つかれた……。」
ゲルディス「いやぁ助かったよ、俺一人ではさばききれなかったかもしれん。ずっといて働いて欲しいくらいだ。」
その言葉に苦笑いで返す。
ゲルディス「おっと、お礼の前に今日頑張ってくれたんだ。特製のスジャンマを奢ろう。」
リコリス「へへ、わりぃな。ずーっと気になってたんだ。皆美味そうに飲んでるからさ。」
(仕事中に飲む人も多いって事はジュースかなんかか?なんの生絞りだろう。)
出されたコップのスジャンマを飲み干す。
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その後の事は覚えていない。
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完全に酔っ払ったリコリスが服を脱ぎ捨てて、その場で寝ようとしはじめ、沸き立ち盛り上がる客達のなか、慌ててゲルディスと街で馴染みになった女性陣に部屋に連行されていったのであった。
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