スカイリムの踊り食いリコリスの旅99話【第三章】ソルスセイム決戦　―後編―

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リコリスの旅99話【第三章】ソルスセイム決戦　―後編―

2014 / 12 / 17 ( Wed ) 21 : 56

カリアス「私の勝ちだ。貴様たちが相手をしていたのは我々の本隊ではない！」

そのかすれた口から笑い声が響く。

カリアス「――今日レイヴンロックは崩壊する。」

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レイヴンロックは大量のアッシュスポーンに囲まれていた。

すぐにアッシュスポーンは行動を起こし、レイヴンロックへと続く門を越えてゆく。

続々と街の中に進入し、その刃を血に染めるために獲物を探す。

しかし、レイヴンロックを守るための兵の姿は見えない。
どちらにせよこの数相手に真正面からぶつかればレイヴンロックの兵力では簡単に粉砕されるだろう。

――――――――――――――――――――

カリアス「貴様らの兵力は多くはない。そして前線にあの娘を含む兵力を出したのが貴様の敗因だ。」

カリアスの声でしゃべるアッシュスポーンを前にヴェレスはにやりと不適に笑う。

ヴェレス「それはどうかな？」

カリアス「なんだと？」

ヴェレス「貴行は私たちを舐めすぎだ。」

――――――――――――――――――――

ウオオオオオオオオオオオオオ！！！！

レイヴンロック中に響き渡るような喊声があがる。
街の四方を囲う城壁や街の高台に衛兵が陣取る。

モーヴァイン「門を閉めろ！やつらを逃がすな！」

その号令とともにアッシュスポーンが入ってきた門は閉められ、アッシュスポーンはレイヴンロックに閉じ込められた形となる。

衛兵隊が矢を番える。街を守るための城壁は今、街の中の敵を殲滅するための檻となった。

モーヴァイン「放てっ！」

大量に入り込んだアッシュスポーンは一切の身動きがとれずに矢の雨を受ける。
アッシュスポーンに動揺が広がる。

思う存分の矢を降らせ、大地を覆うほどいたはずのアッシュスポーンの兵はばらばらと崩れ去り、いまや3分の2ほどまで減っていた。

モーヴァイン「総員抜剣！レドランの兵よ！その名の勇猛さを示せ！」

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ヴェレス「総大将は武勇誇るレドラン家のモーヴァイン評議員だ。私たちも本隊ではない！」
カリアス「くっ……計りおったな！だがまだだ！まだ勝利は揺るがぬ！灰の王よ！レイヴンロックを蹂躙せよ！」

――――――――――――――――――――

その聴こえるはずのない号令に反応するかのようにレイヴンロックの大地から溢れ出す灰の王。

数は5。

衛兵が吹き飛ばされ、弓もその固い体を通さない。

モーヴァイン「くっ、前線！一時退けっ！」

――――――――――――――――――――

カリアス「どうだ、もうあの娘はいないぞ？一人しんがりに残ったところで今頃屍となっているころだ！残る衛兵など灰の王のなぎ払ってくれるわ！」

ヴェレスには見えないはずだがレイヴンロックの戦況は確かに劣勢どころか灰の王の一撃は衛兵隊を崩すのに十分すぎるほどだった。

ヴェレス「貴行はまだ舐めているようだ。二つ、二つだ。」

だがヴェレスは引かない。その顔に不適な笑みを浮かべたまま。

ヴェレス「まず一つ、我がレイヴンロックには最高の鍛冶屋の弟子がいる。」

――――――――――――――――――――

DOOOOOOOOOOOOOON！！

突如轟音と共に灰の王の頭部が爆散する。
それを号令のように町中から轟音。

灰の王は体中を爆散させながら消滅する。

ニコル「次弾装填！轟音を絶やさずに！」

モーヴァイン「建物に当たろうとかまわん！後で直せばいい、撃って撃って撃ちまくれ！」

リコリスとボハンがレイヴンロックを発った日からヴェレスとモーヴァインの依頼でニコルの手によって作られたカノン砲。

その数は10門。

火薬はレイヴンロックの錬金術師や、テルミスリンの援助のおかげで豊富に用意された。

砲弾に込められた炎の塩鉱石の魔力により激しく爆散する一撃は、灰の王の体をいともたやすく打ち崩していった。

何度もの轟音の後、灰の王は全て駆逐されていた。

モーヴァイン「この戦い、勝機はすでに我らにある！総員！残党狩りだ！」

モーヴァイン評議員の一喝により、衛兵隊には喊声が、そしてアッシュスポーンには動揺が広がる。

先日のレイヴンロック防衛戦においてリコリスが灰の王を撃破したときと同じく、その灰の王が打ち崩されたことによりアッシュスポーン達は混乱が広がる。あの嵐の剣士はいないはずだったのにと。

戦いの趨勢はすでに決まっていた。

――――――――――――――――――――

ヴェレス「我々を舐めないほうがいい、カリアス将軍。この戦争、貴行の敗北だ。」

カリアス「憎きレイヴンロックめ！しかし、貴様はここで殺してくれようぞ！」

ヴェレス「舐めているものはもう一つだ。」

斬りかかるカリアス将軍。

ヴェレス「灰を吹き飛ばすのはいつだって『嵐』だ。」

ヴェレスと将軍の間に高速で割ってはいる影。その影は鋼鉄の嵐のように将軍の体を巻き込む。

カリアス「貴様……なぜ生きてる……！？」首だけのアッシュスポーンになった将軍が唸る。

リコリス「覚悟決めてたんだけどな！思わぬ助けだったぜ！」

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無数のアッシュスポーンに囲まれる二人。

リコリス「ボハン、――だよ。」

ボハン「ああ……知っている。」

覚悟を決め、せめてこの背中を守って死のう、そう心に誓って武器を握り締める。

こちらの疲労を見て取り、アッシュスポーンは一気に戦いを決めるために一斉に斬りかかろうと距離を詰めにくる。

―――これが最後か。

その時だった。

ムンゴ「ムワサスー！」

聞き覚えのある声があがる。

思わずどことなく気の抜けた声に斬りかかろうとしたアッシュスポーンまでその身を止める。

リコリス「ム、ムンゴ！？なんでここに！危ないから早く逃げて！」

しかし、ムンゴはその場で踊りながら答える。

ムンゴ「オレ　オマエ　タスケル　ヤクソク　シタ！ヤクソク　マモル！」

リコリス「何言ってんだ！ムンゴ一人増えたってどうしようもない！早く逃げろって！」

ムンゴ「ムンゴ　ヒトリ　チガウ！」

その言葉とともに背後から歓声が上がる。

何人ものムンゴと似た鎧に身を包んだ小さな戦士たち。

ムンゴ「オレ　イチゾク　ゾクチョウ　カチトッタ！リコリス　ツヨクシテクレタオカゲ！」

ムンゴ族長の一族の精兵が一斉にアッシュスポーンへと攻撃をしかける。

その小さな体からは想像も出来ないほどの精強さをもってアッシュスポーンを圧倒して戦いを打ち崩していく。

ムンゴ「ココ　オレタチ　マカス！オマエラ　ハヤク　モドレ！」

ムンゴの連れてきたのは精兵だけではなく、テルミスリンへとリコリスを乗せていったシルトストライダーの子供も一緒だった。

ボハン「先に行け！リコ……また会おう。――生きてな。」

リコリス「！　ああ、ああ！もちろんだ、先いってるぜ！」

シルトストライダーの背に跨り、ヴェレスの作戦本部へとその体を向けるたのだった。

ボハン「……リコ。」

――――――――――――――――――――

リコリス「ってなわけさ。ここらで年貢の納め時ってやつだぜ！」

カリアス「クソ……こちらの援軍はどうした……後々のこちらの増援でチビどもが介入していたとしても圧倒的だったはず！」

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一人佇むネロス
ネロス「ふん、約束は果たしたぞ。ストームブリンガー。」
その後方にはアッシュスポーンの残骸たる灰の後が数十、いや数百もの数が残されていた。

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カリアス「なんてことだ……志……半ばで……。」

その言葉を最後に、カリアスの声を伝えていたアッシュスポーンはただの灰へと崩れていった。

―――レイヴンロック戦線はレイヴンロックの勝利で締めくくられた。

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その後の戦いはレイヴンロック衛兵の間で酒の肴としていつまでも語り継がれることとなった。

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――嵐(ストーム)をもたらした(ブリング)嵐の剣士は、ソルスセイムの灰の空を吹き飛ばして青空を呼び込んだ……と。

～あとがき～
長かったソルスセイム編も次で終わりです。
少し分かりにくい情景が多かったかな……と不安ですがどうでしょうか？
前後編ともにソルスセイム防衛線と同じく雰囲気重視のためにENBを変えてみました。
うちの環境だと少し暗くて見えにくいというのが不安でした。

さて、次で終わりです。ソルスセイム編の最後までもう少しお付き合いください。