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リコリスの旅88話【第三章】 マスターウィザード
相変わらずよく倒されるリコリス。
リコリス「ううん……。オレいったい何して……。」
あんまり上等ではないベッドの上で目が覚める。
確かフロストモス砦の偵察にいって……、確かでっかいアッシュスポーンが出て……。
ムンゴ「リコリス!オキタカ イタクナイカ?」
リコリス「ムンゴ!無事だったか!……イテテ。」
盾で防いだとはいえ体が軋むような痛みはある、が大怪我はせず済んだようだ。
リコリス「ムンゴも無事で良かった。ここはどこなんだ?」
そう言ってあたりを見渡してみる。
なにやら石造りの部屋ではない。有機的な壁と簡素な家具。
しかも……。
リコリス「動く……ホウキ?キノコ?」
動き回るホウキとキノコ。ホウキはいたるところをせっせっせと掃き掃除している。
ムンゴ「ココ モクテキチ テル・ミスリン オレタチ タスケラレタ」
詳しくムンゴに話を聞く。
どうやらオレはあの巨大なアッシュスポーンの一撃を受けて一瞬で意識を失ってしまったようだ。
追撃を喰らう前にムンゴがオレを引っ張ってくれたらしいが、当然ムンゴの小さな体ではオレを引っ張って逃げる事は出来ず……。巨大なアッシュスポーンにつかまってしまったらしい。
あわや握りつぶされるか、砦に連れて行かれるか……ということで覚悟をしたムンゴだが、そこで信じられないような威力の雷撃が、アッシュスポーンの肩を吹き飛ばしたらしい。
ムンゴ「ソレガ ネロス テルミスリン マスターウィザード」
そのマスターウィザードってのに間一髪で助けられたってことか……。
ムンゴ「ネロス ヒトダスケ メズラシイ キヲツケロヨ」
そのネロスってのはどんなやつなんだ?マスターウィザードっていうからには相当の魔術師というのはわかるが。
リコリス「さすがにこの格好で外に出るわけには……。怪我ももうなおってるな。着替えは……。」
ベッドの脇に着替えのためか、服が置いてある。ひとまず包帯を解き、袖を通す。
魔術師のローブか、魔術師の住処だからこんなものしかなかったのかな。
しかし……。
リコリス「だぼだぼだな……。ダンマーは背が高いもんなぁ。」
ひとまず扉を開けて外に出る。
~テル・ミスリン~
ドアを開けると異世界のような光景が広がっていた。
周りを見渡すときのこきのこきのこ……。
自分が出てきた建物もきのこの中に作られていたようで、どうやらこれが住居になっているようだ。
今まで見たことのないような巨大なキノコだ。
いや、巨大どころではない。ソリチュードでみたドール城よりもてっぺんが霞むような超巨大なキノコも見える。
カサだけでうちの宿の何倍もありそうだ。
ムンゴ「ココ テル・ミスリン トオクカラモ ミエル」
確かにレイヴンロックを出たときにムンゴが説明してくれたとおり、こんだけ奇抜な見た目と大きさなら遠くから見ただけでわかるだろう。
外では魔術師が魔法の練習をしていた。ネロスではないらしく、外でもこの付近は安全なことが伺える。
ムンゴ「ネロス アノキノコ ナカデマッテル」
そう言って指差す一番大きなキノコ。
木のうろのようなスロープを登って、ひときわ大きなキノコの中へと入る。
~テル・ミスリン ネロスの研究所~
リコリス「あれ?」
扉を開けるとそこは青い光が立ち上る狭い行き止まりだった。
もちろんネロスの姿はどこにもない。
リコリス「なぁムンゴ、これはどういうこ―――」ムンゴに尋ねながらその青い光の中へと歩を進める。
フワッ……。
体感したことのない感覚。体が急に浮き上がり、狭い部屋をぐんぐんと飛び上がっていく。
リコリス「うわわわわっわわわ!なんだこれ!」浮き上がりめくりあがるローブの裾を必死で押さえながら驚きの声を上げる。
浮力は上に近づくにつれゆるやかになり、下の狭い部屋と違って広々とした部屋の張り出し口までリコリスの体を送ってくれた。
こんな魔法見たことがない。これがマスターウィザードの魔法なのか?
乱れた裾を正して回りを見渡す。
様々な器具や錬金素材に本の山、それ以外にもよくわからないものがいたるところに。
その中に埋もれるようにしてダンマーの男が本を読んでいた。
こちらには気づいているだろうに、本から顔をあげもしない。
リコリス「こ、こんにちは。あんたが助けてくれたんだってな、オレの名はリコリス。あんたがネロスさんか?」
そのダンマーはこちらにちらりと視線を移した後、本を閉じ立ち上がる。
やはりオレより背が高く、立派なあごひげをたくわえていた。
ネロス「いかにも。だが、この塔に招いた覚えはないが。有意義な訪問だと願いたいな。」
いきなりのつっけんどんな物言いに思わずたじろぐ。
リコリス「い、いや礼を言わせてもらいたくて……。命を助けられた、ありがとう……ございます。」
ネロスはフンと鼻をならしてこちらへの視線を外して本をまた読もうとする。
リコリス「え、えーっとここはどういう建物なんだ?」
ネロスは溜息をつき手に持っていた本を、山の一角へと戻してこちらに向き直る。
ネロス「ここはテルヴァンニ家の塔だ。モロウウィンドに生息する巨大な微生物の木の胞子から育てた、我が要塞だ。」
リコリス「テルヴァンニ……そういえば聞いたことがあるような。」確かモーヴァイン評議員がそんな名前を言っていたような。
ネロス「当然だろう。モロウウィンドのマスター・ウィザードを知らぬ者などいない。お前が生涯で会う中で、もっとも強大なウィザードである可能性が高い。」
すげー自信だな。魔術の心得のない自分には、普通のダンマーの老人にしか見えない。見るものが見ればネロスの持つ強大な魔力の流れもわかるのだろうか。
ネロス「さて、次はこちらの番だ。」
こちらを上から下までじっくりと見てから口を開く。
ネロス「お前は何者だ?」
リコリス「え、さっきも言ったとおりリコリs……」
ネロス「お前の名前などは聞いていない。お前自身の事だ。」
オレ自身……?言ってる意味がさっぱりだ。
ネロス「お前の身に流れる魔力は、この世界であり得ないものだ。そもそも器が違うようだが。」
い、言ってる意味がわからねぇ。
ネロス「フン、理解できんか。ならば分かりやすく言ってやる。お前は何をしたらそんな人外のような魔力になるんだ?」
人外……。よくリフテンで仕事をしていた時に言われた言葉だ。
もしかして……。
リコリス「あんたに相談があって来たんだ。実は――」
鉱山地下のノルド遺跡での出来事を詳しく話す。
ドラゴンプリーストとの戦い。そこで一度死に掛けてストームブリンガーが出てきたこと。そして消えたこと。
そのあとの黒い本の事も話す。
黒い本の話になった瞬間ネロスの目が怪しく光る。
ネロス「ほう、ハルメアス・モラに会ったか。本はどうした?」
カバンの中から遺跡で見つけた本を取り出す。
ネロス「ふむ、確かに黒の書だな。面白い。」表紙、裏表紙とじっくりと見てから口を開く。
黒の書について教えてもらった。意外と説明好きなのかもしれない、とても詳しく教えてくれた。
この本は時間と知識を司るデイドラの大公ハルメアス・モラが作り出した本で、
中身が直接モラの支配する世界、無限の蔵書とあらゆる知識の保管庫である「アポクリファ」に繋がっているらしい。
このハルメアス・モラというのはとても強力なデイドラで、このソルスセイムのいたるところでその痕跡が見つかっているらしい。その一つがいくつ存在するかもわからない黒の書。それが今ココに一冊あるわけだ。
ネロス「私も一つ所蔵している。無用心に開くバカではないが。」そう言ってこちらをみる。
無用心なバカ……。しらねーよそんな本が置いてあったなんて……。
リコリス(そういえば、遺跡で見つけたアイテムの扱いは気をつけろって散々言われたっけ……また怒られるな。)
ネロス「それとだ。お前の話を聞いて合点がいった。お前の体と剣についてだ。」
リコリス「ど、どういうことだ?ストームブリンガーの事知ってんのか?」
ネロス「私の知識をお前たちと一緒にするんじゃない。ストームブリンガー、伝説だけは聞いたことがある。」
ストームブリンガー、命をもてあそぶもの・魂の盗人・嵐の使者……色々な呼び名を持つ黒の剣。
いつからか現れて、強大な魔力を所有者に与えて殺戮に駆り立て、そして所有者自身の魂も奪い去っていく魔剣。
ネロス「それが今、お前の中にあるわけだ。強力な魔力として。」
リコリス「魔力……?」
ネロス「お前を連れてきた時、かなりの大怪我だった。致命傷ではないというだけでな。」
自分の身を省みる。そんな怪我もなく傷跡なんて残っていない。
ネロス「お前をここに連れてきて何日だと思う?たった2日だ。遺跡の地下でドラゴンプリーストと戦った時の致命傷もストームブリンガーが癒したのだろう。」
確かにストームブリンガーが消えてから、体の調子がすこぶる良い。
リフテンで仕事をしていた時…いや、あのスタルガルデ決戦の時のようだ。
ネロス「意思ある剣であるストームブリンガーはお前にまだ利用価値があると踏んだ。だから、お前を助け、お前を殺させないように力を与えているのだろう。」
まるで呪いのようだ、と小さく呟いたのをリコリスは聞き逃さなかった。
リコリス「で、でも!最近は大人しかったんだぜ?夢にも出なくなって……。」
ネロス「お前を守っていたのはキナレス……カイネの加護のおかげだろう。だが、ここはハルメアス・モラの力が強い。特に最近は様々な要因でここでのキナレスの力は弱まっているだろう。そして黒の書の近くでの戦闘でさらにストームブリンガーの影響力が増したか。これは憶測だがな。」
リコリス「……どうにかならんのか?やばいんじゃないのか?」
ネロス「さぁな、私の知ったことではない。今はお前の中で眠っているのだすぐに問題が出るわけではないだろう。」
リコリス「そんな!あんた高名な魔術師なんだろう?良い案教えてくれよ!」
ネロス「私も暇じゃないんだが……いや、そうだな。一つ、方法がないこともない。」
先ほどの黒の書を指差す。
ネロス「この本を再び読み、アポクリファに行け。そこにならストームブリンガーに関する書物があるかもしれん。あそこはありとあらゆる本が存在し、存在しない本が存在する世界だ。それを持ってこい。」
それと……、とネロスは付け足す。
ネロス「これは私からの依頼だ。そこで手に入れたストームブリンガーの書と、その黒の書は私に渡せ。それ以外のそこで見つけた本はお前の好きにすれば良い。」
リコリス「じ、実は以前入ったらあっさり撃退されて……。」
ネロス「ふん、ストームブリンガーの呪いを受けているくせにその程度で帰ってきたのか。まぁいい。ならばこれをやる。」
そう言って一枚のマントを棚から取り出す。
ネロス「一品もののマジックアイテムだ。あらゆる魔法の攻撃を弾く。だが、ある程度使うと壊れてしまう。」
お前が一生かかっても払いきれないほどの高額品だ、と念を押してくる。
恐る恐る受取る。
見た目は普通のマントに豪奢な刺繍がされただけに見えるが、信じられないほど軽い。
ネロス「それは私が魔力を練り上げて作った代物だ。誰にも真似して作ることなどできまい。」
どこか自信ありげな顔だ。実際自信に溢れた品なのだろう。
リコリス「わかった、契約成立だ。オレはどうすればいい?」
ネロス「お前の着ていた鎧はすでにひしゃげてひどい状態だった。新しい鎧を用意しなければなるまい。」
まじかよ……重装にしては軽い鎧でファルスカールに着ていった鎧ほどの防御力はないとはいえ、あのエオルンドグレイメーンの一作だ。それがたった一撃でひしゃげて使い物にならなくなるとは……。
あの巨大なアッシュスポーンの一撃に耐えられる鎧はあるのだろうか。
リコリス「じゃ、じゃあオレの剣は?」
ネロス「お前を倒したアッシュスポーン……灰の王と呼ばれる個体が灰に紛れ消え行く際に踏み潰して一緒に埋もれていったな。」
うそだろ……ボハンの大事な剣だぞ……。怒られるって……。
ネロス「ふん、とにかく武器と防具、冒険に必要なものを用意しておけ。こちらは貴様の働きに期待はしていない。本はここに置いておく。準備が整えばいつでも来るがいい。」
マントをこちらから掴み取り、「むろん、この耐魔マントはこちらで保管しておくがな、持ち逃げされてはかなわん」と付け加える。
ネロスは話は終わったというように無言できびすを返し、奥へと戻って本を読み始める。
仕方ない、一度レイヴンロックに戻ってみよう。そもそも、隊長にフロストモス砦の様子を報告に行かねばならないのだ。
完全にこちらを無視し始めたネロスのもとを後にし、外で待っているムンゴに事情を話し、レイヴンロックへと戻る用意をするのでした。
・
・
・
・
・
~リフテン~
ボハン「なんだと?ソルスセイムだって!?」
フロッグ「ダンナ、そんな怒鳴らないでくれよー。昔馴染みだからギルドの情報流してるんだしさ。」
あいつめ、すぐ帰るって言ったくせに何でまたソルスセイムまで……厄介な事に巻き込まれてなければいいが。
このアルゴニアンはフロッグという。旅先で何度か一緒に行動したことがある。盗賊ギルドの一員だが、他と違って人の良いやつだ。今もこうしてギルドの情報網を利用させてもらっている。
ボハン「ソルスセイムということはウィンドヘルムからか。フロッグ、すまなかったな。今度うち宿にも顔出してくれ、歓迎しよう。」
フロッグ「そうさせてもらうよ、ソルスセイムまで遠いけど大丈夫かい?ついていこうか?」
ボハン「それはありがたいが、フロッグもホワイトランへ用事と言っていたろう。無理は言えん。」
フロッグ「そうかぁ、風の向くまま気の向くままだからいつになるかはわからないけど、必ず宿に寄らせてもらうよ。」
ボハン「ああ、その時は美味いものたんと用意させよう、じゃあな。」
フロッグ「き~つけて~、じゃあーねー。」
リフテンに着いたばかりだが、気がはやる。
ウィンドヘルムに急ごう。さっき入る時に見かけた馬車がまだいるはずだ。
~あとがき~
久しぶりのあとがきです。
今回ボハンサイドで登場していただいたのは「旅するトカゲ」にて冒険中の楽しいアルゴニアンのフロッグ・イーターさんです。
Twitterでもお世話になっており、今回の出演も快諾していただけました!
本当は宿にお客さんとして登場してもらうつもりでしたが……ボハンにリコリスの行き先を教える役をお願いしました。
そして、抜け目なく宿に来てもらうフラグを立てます(☆∀☆)
出演ありがとうございます!
リコリス「ううん……。オレいったい何して……。」
あんまり上等ではないベッドの上で目が覚める。
確かフロストモス砦の偵察にいって……、確かでっかいアッシュスポーンが出て……。
ムンゴ「リコリス!オキタカ イタクナイカ?」
リコリス「ムンゴ!無事だったか!……イテテ。」
盾で防いだとはいえ体が軋むような痛みはある、が大怪我はせず済んだようだ。
リコリス「ムンゴも無事で良かった。ここはどこなんだ?」
そう言ってあたりを見渡してみる。
なにやら石造りの部屋ではない。有機的な壁と簡素な家具。
しかも……。
リコリス「動く……ホウキ?キノコ?」
動き回るホウキとキノコ。ホウキはいたるところをせっせっせと掃き掃除している。
ムンゴ「ココ モクテキチ テル・ミスリン オレタチ タスケラレタ」
詳しくムンゴに話を聞く。
どうやらオレはあの巨大なアッシュスポーンの一撃を受けて一瞬で意識を失ってしまったようだ。
追撃を喰らう前にムンゴがオレを引っ張ってくれたらしいが、当然ムンゴの小さな体ではオレを引っ張って逃げる事は出来ず……。巨大なアッシュスポーンにつかまってしまったらしい。
あわや握りつぶされるか、砦に連れて行かれるか……ということで覚悟をしたムンゴだが、そこで信じられないような威力の雷撃が、アッシュスポーンの肩を吹き飛ばしたらしい。
ムンゴ「ソレガ ネロス テルミスリン マスターウィザード」
そのマスターウィザードってのに間一髪で助けられたってことか……。
ムンゴ「ネロス ヒトダスケ メズラシイ キヲツケロヨ」
そのネロスってのはどんなやつなんだ?マスターウィザードっていうからには相当の魔術師というのはわかるが。
リコリス「さすがにこの格好で外に出るわけには……。怪我ももうなおってるな。着替えは……。」
ベッドの脇に着替えのためか、服が置いてある。ひとまず包帯を解き、袖を通す。
魔術師のローブか、魔術師の住処だからこんなものしかなかったのかな。
しかし……。
リコリス「だぼだぼだな……。ダンマーは背が高いもんなぁ。」
ひとまず扉を開けて外に出る。
~テル・ミスリン~
ドアを開けると異世界のような光景が広がっていた。
周りを見渡すときのこきのこきのこ……。
自分が出てきた建物もきのこの中に作られていたようで、どうやらこれが住居になっているようだ。
今まで見たことのないような巨大なキノコだ。
いや、巨大どころではない。ソリチュードでみたドール城よりもてっぺんが霞むような超巨大なキノコも見える。
カサだけでうちの宿の何倍もありそうだ。
ムンゴ「ココ テル・ミスリン トオクカラモ ミエル」
確かにレイヴンロックを出たときにムンゴが説明してくれたとおり、こんだけ奇抜な見た目と大きさなら遠くから見ただけでわかるだろう。
外では魔術師が魔法の練習をしていた。ネロスではないらしく、外でもこの付近は安全なことが伺える。
ムンゴ「ネロス アノキノコ ナカデマッテル」
そう言って指差す一番大きなキノコ。
木のうろのようなスロープを登って、ひときわ大きなキノコの中へと入る。
~テル・ミスリン ネロスの研究所~
リコリス「あれ?」
扉を開けるとそこは青い光が立ち上る狭い行き止まりだった。
もちろんネロスの姿はどこにもない。
リコリス「なぁムンゴ、これはどういうこ―――」ムンゴに尋ねながらその青い光の中へと歩を進める。
フワッ……。
体感したことのない感覚。体が急に浮き上がり、狭い部屋をぐんぐんと飛び上がっていく。
リコリス「うわわわわっわわわ!なんだこれ!」浮き上がりめくりあがるローブの裾を必死で押さえながら驚きの声を上げる。
浮力は上に近づくにつれゆるやかになり、下の狭い部屋と違って広々とした部屋の張り出し口までリコリスの体を送ってくれた。
こんな魔法見たことがない。これがマスターウィザードの魔法なのか?
乱れた裾を正して回りを見渡す。
様々な器具や錬金素材に本の山、それ以外にもよくわからないものがいたるところに。
その中に埋もれるようにしてダンマーの男が本を読んでいた。
こちらには気づいているだろうに、本から顔をあげもしない。
リコリス「こ、こんにちは。あんたが助けてくれたんだってな、オレの名はリコリス。あんたがネロスさんか?」
そのダンマーはこちらにちらりと視線を移した後、本を閉じ立ち上がる。
やはりオレより背が高く、立派なあごひげをたくわえていた。
ネロス「いかにも。だが、この塔に招いた覚えはないが。有意義な訪問だと願いたいな。」
いきなりのつっけんどんな物言いに思わずたじろぐ。
リコリス「い、いや礼を言わせてもらいたくて……。命を助けられた、ありがとう……ございます。」
ネロスはフンと鼻をならしてこちらへの視線を外して本をまた読もうとする。
リコリス「え、えーっとここはどういう建物なんだ?」
ネロスは溜息をつき手に持っていた本を、山の一角へと戻してこちらに向き直る。
ネロス「ここはテルヴァンニ家の塔だ。モロウウィンドに生息する巨大な微生物の木の胞子から育てた、我が要塞だ。」
リコリス「テルヴァンニ……そういえば聞いたことがあるような。」確かモーヴァイン評議員がそんな名前を言っていたような。
ネロス「当然だろう。モロウウィンドのマスター・ウィザードを知らぬ者などいない。お前が生涯で会う中で、もっとも強大なウィザードである可能性が高い。」
すげー自信だな。魔術の心得のない自分には、普通のダンマーの老人にしか見えない。見るものが見ればネロスの持つ強大な魔力の流れもわかるのだろうか。
ネロス「さて、次はこちらの番だ。」
こちらを上から下までじっくりと見てから口を開く。
ネロス「お前は何者だ?」
リコリス「え、さっきも言ったとおりリコリs……」
ネロス「お前の名前などは聞いていない。お前自身の事だ。」
オレ自身……?言ってる意味がさっぱりだ。
ネロス「お前の身に流れる魔力は、この世界であり得ないものだ。そもそも器が違うようだが。」
い、言ってる意味がわからねぇ。
ネロス「フン、理解できんか。ならば分かりやすく言ってやる。お前は何をしたらそんな人外のような魔力になるんだ?」
人外……。よくリフテンで仕事をしていた時に言われた言葉だ。
もしかして……。
リコリス「あんたに相談があって来たんだ。実は――」
鉱山地下のノルド遺跡での出来事を詳しく話す。
ドラゴンプリーストとの戦い。そこで一度死に掛けてストームブリンガーが出てきたこと。そして消えたこと。
そのあとの黒い本の事も話す。
黒い本の話になった瞬間ネロスの目が怪しく光る。
ネロス「ほう、ハルメアス・モラに会ったか。本はどうした?」
カバンの中から遺跡で見つけた本を取り出す。
ネロス「ふむ、確かに黒の書だな。面白い。」表紙、裏表紙とじっくりと見てから口を開く。
黒の書について教えてもらった。意外と説明好きなのかもしれない、とても詳しく教えてくれた。
この本は時間と知識を司るデイドラの大公ハルメアス・モラが作り出した本で、
中身が直接モラの支配する世界、無限の蔵書とあらゆる知識の保管庫である「アポクリファ」に繋がっているらしい。
このハルメアス・モラというのはとても強力なデイドラで、このソルスセイムのいたるところでその痕跡が見つかっているらしい。その一つがいくつ存在するかもわからない黒の書。それが今ココに一冊あるわけだ。
ネロス「私も一つ所蔵している。無用心に開くバカではないが。」そう言ってこちらをみる。
無用心なバカ……。しらねーよそんな本が置いてあったなんて……。
リコリス(そういえば、遺跡で見つけたアイテムの扱いは気をつけろって散々言われたっけ……また怒られるな。)
ネロス「それとだ。お前の話を聞いて合点がいった。お前の体と剣についてだ。」
リコリス「ど、どういうことだ?ストームブリンガーの事知ってんのか?」
ネロス「私の知識をお前たちと一緒にするんじゃない。ストームブリンガー、伝説だけは聞いたことがある。」
ストームブリンガー、命をもてあそぶもの・魂の盗人・嵐の使者……色々な呼び名を持つ黒の剣。
いつからか現れて、強大な魔力を所有者に与えて殺戮に駆り立て、そして所有者自身の魂も奪い去っていく魔剣。
ネロス「それが今、お前の中にあるわけだ。強力な魔力として。」
リコリス「魔力……?」
ネロス「お前を連れてきた時、かなりの大怪我だった。致命傷ではないというだけでな。」
自分の身を省みる。そんな怪我もなく傷跡なんて残っていない。
ネロス「お前をここに連れてきて何日だと思う?たった2日だ。遺跡の地下でドラゴンプリーストと戦った時の致命傷もストームブリンガーが癒したのだろう。」
確かにストームブリンガーが消えてから、体の調子がすこぶる良い。
リフテンで仕事をしていた時…いや、あのスタルガルデ決戦の時のようだ。
ネロス「意思ある剣であるストームブリンガーはお前にまだ利用価値があると踏んだ。だから、お前を助け、お前を殺させないように力を与えているのだろう。」
まるで呪いのようだ、と小さく呟いたのをリコリスは聞き逃さなかった。
リコリス「で、でも!最近は大人しかったんだぜ?夢にも出なくなって……。」
ネロス「お前を守っていたのはキナレス……カイネの加護のおかげだろう。だが、ここはハルメアス・モラの力が強い。特に最近は様々な要因でここでのキナレスの力は弱まっているだろう。そして黒の書の近くでの戦闘でさらにストームブリンガーの影響力が増したか。これは憶測だがな。」
リコリス「……どうにかならんのか?やばいんじゃないのか?」
ネロス「さぁな、私の知ったことではない。今はお前の中で眠っているのだすぐに問題が出るわけではないだろう。」
リコリス「そんな!あんた高名な魔術師なんだろう?良い案教えてくれよ!」
ネロス「私も暇じゃないんだが……いや、そうだな。一つ、方法がないこともない。」
先ほどの黒の書を指差す。
ネロス「この本を再び読み、アポクリファに行け。そこにならストームブリンガーに関する書物があるかもしれん。あそこはありとあらゆる本が存在し、存在しない本が存在する世界だ。それを持ってこい。」
それと……、とネロスは付け足す。
ネロス「これは私からの依頼だ。そこで手に入れたストームブリンガーの書と、その黒の書は私に渡せ。それ以外のそこで見つけた本はお前の好きにすれば良い。」
リコリス「じ、実は以前入ったらあっさり撃退されて……。」
ネロス「ふん、ストームブリンガーの呪いを受けているくせにその程度で帰ってきたのか。まぁいい。ならばこれをやる。」
そう言って一枚のマントを棚から取り出す。
ネロス「一品もののマジックアイテムだ。あらゆる魔法の攻撃を弾く。だが、ある程度使うと壊れてしまう。」
お前が一生かかっても払いきれないほどの高額品だ、と念を押してくる。
恐る恐る受取る。
見た目は普通のマントに豪奢な刺繍がされただけに見えるが、信じられないほど軽い。
ネロス「それは私が魔力を練り上げて作った代物だ。誰にも真似して作ることなどできまい。」
どこか自信ありげな顔だ。実際自信に溢れた品なのだろう。
リコリス「わかった、契約成立だ。オレはどうすればいい?」
ネロス「お前の着ていた鎧はすでにひしゃげてひどい状態だった。新しい鎧を用意しなければなるまい。」
まじかよ……重装にしては軽い鎧でファルスカールに着ていった鎧ほどの防御力はないとはいえ、あのエオルンドグレイメーンの一作だ。それがたった一撃でひしゃげて使い物にならなくなるとは……。
あの巨大なアッシュスポーンの一撃に耐えられる鎧はあるのだろうか。
リコリス「じゃ、じゃあオレの剣は?」
ネロス「お前を倒したアッシュスポーン……灰の王と呼ばれる個体が灰に紛れ消え行く際に踏み潰して一緒に埋もれていったな。」
うそだろ……ボハンの大事な剣だぞ……。怒られるって……。
ネロス「ふん、とにかく武器と防具、冒険に必要なものを用意しておけ。こちらは貴様の働きに期待はしていない。本はここに置いておく。準備が整えばいつでも来るがいい。」
マントをこちらから掴み取り、「むろん、この耐魔マントはこちらで保管しておくがな、持ち逃げされてはかなわん」と付け加える。
ネロスは話は終わったというように無言できびすを返し、奥へと戻って本を読み始める。
仕方ない、一度レイヴンロックに戻ってみよう。そもそも、隊長にフロストモス砦の様子を報告に行かねばならないのだ。
完全にこちらを無視し始めたネロスのもとを後にし、外で待っているムンゴに事情を話し、レイヴンロックへと戻る用意をするのでした。
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~リフテン~
ボハン「なんだと?ソルスセイムだって!?」
フロッグ「ダンナ、そんな怒鳴らないでくれよー。昔馴染みだからギルドの情報流してるんだしさ。」
あいつめ、すぐ帰るって言ったくせに何でまたソルスセイムまで……厄介な事に巻き込まれてなければいいが。
このアルゴニアンはフロッグという。旅先で何度か一緒に行動したことがある。盗賊ギルドの一員だが、他と違って人の良いやつだ。今もこうしてギルドの情報網を利用させてもらっている。
ボハン「ソルスセイムということはウィンドヘルムからか。フロッグ、すまなかったな。今度うち宿にも顔出してくれ、歓迎しよう。」
フロッグ「そうさせてもらうよ、ソルスセイムまで遠いけど大丈夫かい?ついていこうか?」
ボハン「それはありがたいが、フロッグもホワイトランへ用事と言っていたろう。無理は言えん。」
フロッグ「そうかぁ、風の向くまま気の向くままだからいつになるかはわからないけど、必ず宿に寄らせてもらうよ。」
ボハン「ああ、その時は美味いものたんと用意させよう、じゃあな。」
フロッグ「き~つけて~、じゃあーねー。」
リフテンに着いたばかりだが、気がはやる。
ウィンドヘルムに急ごう。さっき入る時に見かけた馬車がまだいるはずだ。
~あとがき~
久しぶりのあとがきです。
今回ボハンサイドで登場していただいたのは「旅するトカゲ」にて冒険中の楽しいアルゴニアンのフロッグ・イーターさんです。
Twitterでもお世話になっており、今回の出演も快諾していただけました!
本当は宿にお客さんとして登場してもらうつもりでしたが……ボハンにリコリスの行き先を教える役をお願いしました。
そして、抜け目なく宿に来てもらうフラグを立てます(☆∀☆)
出演ありがとうございます!
- [ edit ]
- RP日記
- / trackback:0
- / comment:6
いつもお世話になっております・・!
うちのトカゲを出していただき、本当にありがとうございます!どこかのんびりした感じで話すフロッグになんだか自分の原点を垣間見たような気がしました
この経験を私は次に生かしたいと思います!感謝!
しかし、こうやって自分で作ったキャラを出していただけるって
照れくさいよーな、嬉しいよーな・・・なんともいえない気分w
私もちゃちゃっとシーフギルドを済ませて
スカイリムブロガーのキャラたちと旅をさせてみたいもんです・・
Re: いつもお世話になっております・・!
- [ 編集 ]
- 2014/10/11(土) 03:04:46 |
- URL |
- Lycoris
コメントありがとうございます!
いえいえ、むしろいつもこちらがお世話になっております!
フロッグさんのブログいつも楽しく見てたので、フロッグさん自身にそういってもらえてとっても嬉しいですw
のんびりゆったりなフロッグさんの冒険楽しみにしてますw
色んな世界で自分のキャラが生きてるってとってもすごいですよねw
フロッグさんの冒険に色んな方々が出るのも楽しみ(☆∀☆)
Re: タイトルなし
- [ 編集 ]
- 2014/10/11(土) 03:09:17 |
- URL |
- Lycoris
コメントありがとうございます!
ムンゴはなんなんでしょうね、宿に泊まっていた時も同じ部屋にいたのできっとそういう欲がないんですかね!すごい……!
めくりあがるローブ、実はそこのみ今回ポーズまで作ってたりしました(*'-')
いいですよね!めくりあがるローブ!ロマンが広がります!
ぜひ同志という事で私も仲間に(*'-')b
- [ 編集 ]
- 2014/10/11(土) 10:29:32 |
- URL |
- 通りすがり
Re: タイトルなし
- [ 編集 ]
- 2014/10/11(土) 22:58:38 |
- URL |
- Lycoris
コメントありがとうございます!
確かCotyounoyumeさんので何かシャウトでめくれあがるローブありましたよね。
モーションつきですごい!と思って、今回もあれを使わせていただこうと思ったのですが、自分自身にはかけれず……w
まさにあんなイメージでした(ノ´∀`*)
プロフィール
Author:Lycoris
スカイリムのんびり更新日記。
Lycorisです。よろしくお願いします。
当ブログはリンクフリーです。
連絡をいただければ相互リンクさせていただきます。
ご意見・ご要望はメールフォームから何でもどうぞー!
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