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リコリスの旅93話【第三章】 ネロスの条件
~ソルスセイム~
ボハン「珍しいな。旅立ちにはいい日だ。」
空を見上げると灰だらけのいつもの空と違って、澄み切った青空が広がっていた。
リコリス「珍しいなぁ、バーニーも嬉しそうだ。」
そっと乗せてくれているシルトストライダーの子の背を撫でる。
この子も親元に返さなければならない。道中何事もなければいいが。
・
・
・
・
そんな心配も無用というように、道中はアッシュスポーンどころか蟲一匹出ることもなくテルミスリンのそばまで到着した。
リコリス「危なげなくてよかったなぁ、やっぱり前の戦いでほとんど始末できたんじゃないか?運が良かったぜ。」
ボハン「……そうだな。」
ボハン(おそらくヴェレスの言う通り、嵐の前の静けさだろう。その証拠に蟲すらいない。おそらくアッシュスポーンの気配に怯えて出てこないんだろう。)
出発時の青空はもうそこにはなく、辺りは重く暗い灰が降りつつあった。
・
・
・
リコリス「すっげええええええええ!」
思わず感嘆の声をあげるリコリス。
ボハン「すごいな……俺も初めて見る。これがシルトストライダーの生き残りか。」
視線の先にはここまで運んでくれたバーニーの親のシルトストライダー。
その巨体はリコリス以上の大きさのバーニーの数十倍はありそうなものだ。
足の一つの節だけでリコリスの倍はありそうだ。
鳴き声も遠く響き渡るような大きな声だ。
その声に答えるかのようにバーニーもクーィイーと元気よく鳴く。
親のシルトストライダーの飼い主にバーニーを返し、そこからテルミスリンまで歩く。
距離は大したことは無く、すぐにテルミスリンへとたどり着いた。
執事さんに挨拶をしてネロスのいるもっとも大きなキノコの塔に向かう。
・
・
・
~テルミスリン・ネロスの塔~
ネロス「ふん、帰ってきたか。遅かったな。」
リコリス「わりぃな、ちょっとレイヴンロックで色々あってさ。」
ボハンと一緒にレイヴンロックであった出来事を伝える。
ネロス「詳細は千里眼の魔法で見ていた。そっちのは……」
ボハン「俺はボハンだ。こいつの……保護者だ。」
ネロス「興味はないな。で、さっさと仕事をこなしてくれるのかな?」
リコリス「それなんだけど……。」
レイヴンロックの問題、次に攻められれば耐えられないこと、兵員に被害が出てこのままではすぐにはフロストモス砦を落とせないこと。そのために援軍をお願いしたいということを伝える。しかし……。
ネロス「なぜ私がレドラン家のために自分の研究を中断してまで救援せねばならんのだ?」
予想通りの反応。ボハンが口を開く。
ボハン「レイヴンロックが落ちれば次の標的はここだ。守りきれるのか?守りきれたとしても今手を貸すよりもさらに多くの時間を浪費することだろう。」
ボハン「それに……」そういってかばんから小さな包みを取り出す。
ネロス「ほほう……。面白いものを持ってきたな。」
ボハン「礼はこのドラゴンの血と鱗だ。採り立てとは言えないが、氷の精霊の歯と一緒に保管してある。」
ネロス「良くこんなものを用意できたな。レドラン家も本気というわけか。」
昨日の今日でどうやってこんなものを用意したのかはエイドリアルのみぞ知ると言ったところだが、
恐らく前々からテルミスリンに援軍を頼む算段は立てていたのだろう。
スカイリム本土でのドラゴンボーンの働きによって超高額ながら流通しているのだ。
ネロス「だが、手を貸す前にこちらの要求だ。まずは貴様に頼んだ黒の書の中の探索を進めてもらう。」
リコリス「で、でも!レイヴンロックは一刻を争う自体なんだぜ!?急いで救援に行かないと!」
ネロス「ならばすぐにでも黒の書の探索を終わらせるんだな。要求が飲めないならこれまでだ。」
そう言って奥に引っ込もうとする。足元見やがって……。
リコリス「わかtt―― ボハン「わかった、だが俺が行く。こいつには行かせない。」
ネロス「ほう?自己犠牲か?だが残念だったな。いまやこの黒の書はその女を求めている。お前が開いても精神を汚されるだけだ。」
ボハン「……ならば俺も一緒に入る。それならばいいだろう?」
リコリス「お、おい!ボハン!これはオレの問題で――」ボハン「黙っていろ。」
ネロス「ふん、今までそんな物好きなことした話は聞かない。どうなっても知らんからな。」
ボハン「上等だ。今日はここで休ませてもらうぞ。明日、依頼をこなす。」
ネロス「いいだろう。部屋は執事に案内して貰え。」
・
・
・
~テルミスリン・個室~
リコリス「……いつもごめん。」
ボハン「どうした急に。」
執事に宿泊用のキノコ部屋へと案内された二人。
武器防具の点検を済ませ、ベッドで明日に備えて休もうとしていた。
リコリス「また迷惑かけちまって……オレ一人でいけばいいものなのに……。」
頭をコツンと叩かれる。
ボハン「バカ、お前一人行かせるわけないだろう。俺も一緒に行く。」
それにお前一人のほうが心配で余計迷惑かも知れんぞと笑うボハン。
リコリス「オ、オレだってかなり強くなったんだぜ!……ありがとう。」
ボハン「知ってるさ。」
・
・
・
~次の日・ネロスの塔~
ネロス「用意はいいか?」
リコリス「ああ、いける。」
しっかりと身体を休め、武器防具道具の準備点検も済ませた。
ネロスの耐魔マントもしっかりとカバンに入れた。
リコリス「じゃあ本を開くぜ。……ボハン。」
ボハン「ああ、一緒だ。」
ボハンが後ろから抱きしめてくる。こうして密着すれば一緒に行けるだろうという算段だ。
本を開く。そして初めて開いた時と同じ感覚。
ゆっくりと本から飛び出てきた触手の感覚と共に意識は暗転して……。
つづく
ボハン「珍しいな。旅立ちにはいい日だ。」
空を見上げると灰だらけのいつもの空と違って、澄み切った青空が広がっていた。
リコリス「珍しいなぁ、バーニーも嬉しそうだ。」
そっと乗せてくれているシルトストライダーの子の背を撫でる。
この子も親元に返さなければならない。道中何事もなければいいが。
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そんな心配も無用というように、道中はアッシュスポーンどころか蟲一匹出ることもなくテルミスリンのそばまで到着した。
リコリス「危なげなくてよかったなぁ、やっぱり前の戦いでほとんど始末できたんじゃないか?運が良かったぜ。」
ボハン「……そうだな。」
ボハン(おそらくヴェレスの言う通り、嵐の前の静けさだろう。その証拠に蟲すらいない。おそらくアッシュスポーンの気配に怯えて出てこないんだろう。)
出発時の青空はもうそこにはなく、辺りは重く暗い灰が降りつつあった。
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リコリス「すっげええええええええ!」
思わず感嘆の声をあげるリコリス。
ボハン「すごいな……俺も初めて見る。これがシルトストライダーの生き残りか。」
視線の先にはここまで運んでくれたバーニーの親のシルトストライダー。
その巨体はリコリス以上の大きさのバーニーの数十倍はありそうなものだ。
足の一つの節だけでリコリスの倍はありそうだ。
鳴き声も遠く響き渡るような大きな声だ。
その声に答えるかのようにバーニーもクーィイーと元気よく鳴く。
親のシルトストライダーの飼い主にバーニーを返し、そこからテルミスリンまで歩く。
距離は大したことは無く、すぐにテルミスリンへとたどり着いた。
執事さんに挨拶をしてネロスのいるもっとも大きなキノコの塔に向かう。
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~テルミスリン・ネロスの塔~
ネロス「ふん、帰ってきたか。遅かったな。」
リコリス「わりぃな、ちょっとレイヴンロックで色々あってさ。」
ボハンと一緒にレイヴンロックであった出来事を伝える。
ネロス「詳細は千里眼の魔法で見ていた。そっちのは……」
ボハン「俺はボハンだ。こいつの……保護者だ。」
ネロス「興味はないな。で、さっさと仕事をこなしてくれるのかな?」
リコリス「それなんだけど……。」
レイヴンロックの問題、次に攻められれば耐えられないこと、兵員に被害が出てこのままではすぐにはフロストモス砦を落とせないこと。そのために援軍をお願いしたいということを伝える。しかし……。
ネロス「なぜ私がレドラン家のために自分の研究を中断してまで救援せねばならんのだ?」
予想通りの反応。ボハンが口を開く。
ボハン「レイヴンロックが落ちれば次の標的はここだ。守りきれるのか?守りきれたとしても今手を貸すよりもさらに多くの時間を浪費することだろう。」
ボハン「それに……」そういってかばんから小さな包みを取り出す。
ネロス「ほほう……。面白いものを持ってきたな。」
ボハン「礼はこのドラゴンの血と鱗だ。採り立てとは言えないが、氷の精霊の歯と一緒に保管してある。」
ネロス「良くこんなものを用意できたな。レドラン家も本気というわけか。」
昨日の今日でどうやってこんなものを用意したのかはエイドリアルのみぞ知ると言ったところだが、
恐らく前々からテルミスリンに援軍を頼む算段は立てていたのだろう。
スカイリム本土でのドラゴンボーンの働きによって超高額ながら流通しているのだ。
ネロス「だが、手を貸す前にこちらの要求だ。まずは貴様に頼んだ黒の書の中の探索を進めてもらう。」
リコリス「で、でも!レイヴンロックは一刻を争う自体なんだぜ!?急いで救援に行かないと!」
ネロス「ならばすぐにでも黒の書の探索を終わらせるんだな。要求が飲めないならこれまでだ。」
そう言って奥に引っ込もうとする。足元見やがって……。
リコリス「わかtt―― ボハン「わかった、だが俺が行く。こいつには行かせない。」
ネロス「ほう?自己犠牲か?だが残念だったな。いまやこの黒の書はその女を求めている。お前が開いても精神を汚されるだけだ。」
ボハン「……ならば俺も一緒に入る。それならばいいだろう?」
リコリス「お、おい!ボハン!これはオレの問題で――」ボハン「黙っていろ。」
ネロス「ふん、今までそんな物好きなことした話は聞かない。どうなっても知らんからな。」
ボハン「上等だ。今日はここで休ませてもらうぞ。明日、依頼をこなす。」
ネロス「いいだろう。部屋は執事に案内して貰え。」
・
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~テルミスリン・個室~
リコリス「……いつもごめん。」
ボハン「どうした急に。」
執事に宿泊用のキノコ部屋へと案内された二人。
武器防具の点検を済ませ、ベッドで明日に備えて休もうとしていた。
リコリス「また迷惑かけちまって……オレ一人でいけばいいものなのに……。」
頭をコツンと叩かれる。
ボハン「バカ、お前一人行かせるわけないだろう。俺も一緒に行く。」
それにお前一人のほうが心配で余計迷惑かも知れんぞと笑うボハン。
リコリス「オ、オレだってかなり強くなったんだぜ!……ありがとう。」
ボハン「知ってるさ。」
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~次の日・ネロスの塔~
ネロス「用意はいいか?」
リコリス「ああ、いける。」
しっかりと身体を休め、武器防具道具の準備点検も済ませた。
ネロスの耐魔マントもしっかりとカバンに入れた。
リコリス「じゃあ本を開くぜ。……ボハン。」
ボハン「ああ、一緒だ。」
ボハンが後ろから抱きしめてくる。こうして密着すれば一緒に行けるだろうという算段だ。
本を開く。そして初めて開いた時と同じ感覚。
ゆっくりと本から飛び出てきた触手の感覚と共に意識は暗転して……。
つづく
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