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リコリスの旅45話【第二章】ボルヴァルド脱出戦 後編
45話です。
そろそろのんびりした話を書きたいです。
戦闘描写とか難易度高すぎですだめです。
~ボルヴァルド地下墓地~
かび臭さが鼻を突く。
マントでぐいと鼻を覆い臭いを遮断しようとしたが、辺りに充満した臭いから鼻を守りきれない。
ゴラン「ここでお別れです、首長。」
階段を降りきって、一番後ろをついてきていたゴランが声をかける。
驚くヴァルフレッドとリコリス、ゴランはこちらをまっすぐ見据え決意の瞳を向ける。
ゴラン「上にはあまりにも多くの山賊たちがいます。ここにも雪崩れ込んでくるでしょう。これ以上同行する事はできません。ここに留まり彼らを食い止めます。」
ヴァルフレッド「だがゴラン、お前だけでは……。」
「そ、そうだぜ!オレなら山賊が何人いようと負けはしない!」
ゴラン「忘れたか!君の役目を。ここで君を逃がさなければ全ては無駄に終わるのだ!」
強い口調で制される。そしてヴァルフレッドに向き直り小さく礼をする。
ゴラン「議論をしている時間はありません!行ってください!」
扉が閉められる。ヴァルフレッドの決断は早かった。
ヴァルフレッド「…いいだろう。彼の死を無駄にしないためにも行かなければ。」
「で、でも!」
ヴァルフレッド「今は君の力を無駄遣いしていい場面ではない!」そういって手を引っ張る。
ゴラン「頼みましたよ。」一人ドアを前に剣を抜く。
・
・
・
・
・
・
・
・
・
「ウオオオオオオオオオオオオ!!!」
ストームブリンガーを構え突撃する。
「は、はやすgぎゃあああああああ!!」
「そこをどけええええええええええええ!!!」
山賊「こ、こっちにくrぐぎゃああっ!」
行く手を阻むものは全て斬り捨てて行く。
ヴァルフレッド「……噂以上だな、旅人よ。」
荒く息をつく。
「はぁはぁ……身体は軽くなるはずなんだがな。これでも最近ついてきてない気がするんだ。」
「ヴァルフレッドさん、前には出るなよ。オレが、オレが全部やる……!」
(クフフフ、どういう風の吹き回しだ?あははは、楽しいねぇ!)
「うるせぇ!グダグダいってねぇで身体もっと動かさせろ!」
何人もの山賊を一太刀に切り捨てる。
・
・
・
・
・
ヴァルフレッド「ああ神よ……あれは!?」
少し開けた場所に出る。するとヴァルフレッドは何かを見つめ、その場に倒れこみそうな声をあげる。
その視線の先には台座。その上には何も乗っていない。
横から視界に入ってくる影が見える。
真っ赤な血のような戦化粧にオーク特有の突き出た牙。
その牙の口は精悍にして獰猛な笑みを浮かべている。
ヴァルフレッド「コルグリム・・・・・・!」
コルグリムと呼ばれた男は大声で笑いながら、にやりと笑いかける。
コルグリム「ウラー!俺を止めにきたのなら手遅れだったな。鍵は俺のものだ。イングヴァールは神々の心臓を手に入れ、お前達すべてを支配することになる!」
そう一方的に言い残し去っていくコルグリム。
コルグリムの言葉を聞き驚愕の面持ちのヴァルフレッド。
ヴァルフレッド「そうか・・・!神々の心臓、イングヴァールはあれを見つけたに違いない。それこそがヤツが探していたものか。これはまずい、非常にまずいぞ!行こう、急がねば!」
急いで通路を抜ける。
山賊長「へっへっへ、ここは通さねぇぜ。」何人もの山賊の足音と怒声。
「ちぃ!邪魔だ!」
挑みかかってきた山賊を2,3人まとめて斬り飛ばす。
山賊長「まだだ!畳み掛けろ!」
こいつら、恐怖で動いているのか。
山賊の目にはすべからく恐怖心が見える。こちらに対する恐怖心以上の恐怖か。
「くそっ…・・・身体が……重い。オレはこんなところで立ち止ってられねぇえんだああああ!」
山賊に眼を向ける、数は10…20…30に近い。
「ストームブリンガー、力を貸せ!オレの体でもやる!オレに力をよこせええええ!!」
(まずは一つ契約成立だ。クフフ、ならばまずはオレの力の一片を貸してやろう。)
急に体が軽くなる。
(クフフ、久しぶりの開放だ。それには敵が少なすぎるなぁアハハハハハ!!)
手に握るストームブリンガーが唸る、自分の体でありながらストームブリンガーの意思が乗り移ったかのように剣が舞い踊る。
(我こそは剣の王、魂あるものならば私の前に立ち塞がる事はかなわぬ。私に歯向かうその悉くは死ね!)
ストームブリンガーが舞うたび首が飛ぶ飛ぶ飛ぶ。
剣閃が煌くたびに胴が真っ二つに斬る斬る斬る斬る斬る。
今まで以上の力にリコリス自身も高揚を感じる。
ヒャハッ!しねえぇぇええええ
意識はすべてストームブリンガーにのっとられそうになるも、ギリギリで踏みとどまっている状態。
近くにある全てを斬り殺し、その刃はヴァルフレッドにも向けられる。
(お前も死んでおけええええクフフ、ヒャハッ!)
「やあああめえええろおおおおおお!!!」
自分のいう事を聞かない体を無理やり止める。体中の筋肉がミシミシと音を立てている。
(チッ、無理やり私の制御を奪い取るか。まぁいい今日は満足だ。まずは契約の一つが終わったのだ、クフフ。)
はぁ・・・はぁ・・・
ヴァルフレッド「だ、大丈夫かね?しかし、この場所は……。」
辺りを見渡す。自分の斬り殺した山賊と……大量の樽。中身は……。
ヴァルフレッド「なんなんだこのオイルは?まさか……連中は町ごと吹き飛ばすつもりか!?出口はすぐだ、急ぐぞ!」
・
・
・
・
・
・
~ボルヴァルド・秘密の抜け道出口~
秘密の抜け道を抜けた先は崖になっていた。
ヴァルフレッド「着いたな、ここから脱出できる。さぁ行け!ここから飛び降りるんだ、下は池だから安全だ。君が生き残るにはそれしかない。」
下を覗くと池が見える。十分な深さもありそうだ。
「よっし、なんとかなりそうだな。じゃあ一緒に!」
ヴァルフレッド「アグナーにイングヴァールが神々の心臓を狙っていると伝えてくれ。それで彼も分かる。」
「な、何言ってんだよ、あんたが伝えればいいだろ!」
しかしヴァルフレッドはこちらににこりと柔らかな笑顔を向ける。
「私はここで連中を食い止めねばならない。さぁ君だけでも!」
「で、でも!」
ヴァルフレッドはその手から魔力を放出し、出口を封じる。
その扉の向こうからドアを叩く音が聞こえる。
ヴァルフレッド「急げ!いつまでも、長くは食い止められない!」
逡巡する間にヴァルフレッドはこちらを強く崖の先へと突き飛ばす。
「ま、まってくれ、ここまで来て守れないなんて……!」
その言葉はヴァルフレッドに届いたか届かなかったか、崖の下へと落ちていく。
頭上で轟音。火薬が爆発したのだ。
その衝撃で態勢を崩すも池に落ちる。
・
・
・
・
・
・
「ゲホッゲホゲホッ……くそっ。ひとまず体は無事か……。」
池からあがると体の異常を確かめる。
体中は痛いが致命傷はない、ストームブリンガーから無理やり体を奪い返した時の無理分くらいだ。
山賊長「へっへっへっへ、警戒してて良かったぜ。空からおこぼれが降ってくるなんてな。おい、もっと人数呼んで来い!」
「くそっ!何人たばになってもお前らなんて負けねぇぞ……命を無駄にするな!」
向かってくる数人を切り捨てる。ストームブリンガーから魔力が流れ込み活力になる。
ひときわ偉そうな男がにやりと笑う。
山賊長「お前さんの強さの事は知ってるぜ、でもこれならどうかな?」
山賊長が小さく呪文を唱える。
すると殺したはずの山賊がピクリと動き始める。
「ま、まさか・・・!?」
大声で笑いはじめる山賊長。
山賊長「そうよ、そのまさかよ!俺の得意なのは死霊術。殺しても殺してもこちらの手勢はへらねぇ、お前はいつまで耐えられるかな?」
恐怖で攻撃しか頭にない山賊と、痛みを感じない死者の兵。
気がつけば援軍が援軍を呼び、その数は数え切れない。
山賊長「お前の首を取れば、どれほどの報酬がもらえるかもわからねぇ。もしかしたら軍の大将軍だぜ!」
ジリジリと死体と生者が間合いを詰める。
(くそ、死体相手ではストームブリンガーも……。)
魂の吸えない相手ではストームブリンガーの力も極端に落ちる。
山賊長「ぐふふ、いたぶっていたぶって、最後にその首は俺の報酬になれええ!」
数十人と数十体を切り伏せた頃、さすがに身体のいう事が効かない。
水に濡れたままというのも身体を重くさせている。
さすがの山賊長も死体のまま動かない死体も増えてきたが依然、戦力は圧倒的。
――ここまでか、アグナーに知らせることもできないまま……――
山賊が下卑た笑みを浮かべながら近寄ってくる。
もう手に力は入らない。疲れが極限まで貯まりすぎた。
きっと仲間を殺しまくったんだ。怒り狂った山賊にボロ雑巾のように殺されるだろう。
あの山賊長の慰み者かもしれない、死体として。
くそっ……ボハン……。
思わず眼を瞑ってしまう。
???「そこまでだ!!」
凛とした声が聞こえる。
ハッっとそちらに視線を向ける。
視線の先には何人もの兵士。
???「味方を助けよ!全員弓番えーっい!」
敵の集団に向けて正確に矢が雨のように降り注ぐ。
完全な奇襲を横合いから喰らい、山賊は完全に浮き足立っているようだ。
号令の中心には見知った顔と懐かしい顔。
「クーロン……に、ロイズ……さん、無事で…よか…った。」
その場にへたり込む。
強襲された山賊はすでに増援にかかりっきりだ。
・
・
・
・
・
・
・
戦闘はすぐに終わり、クーロンとロイズが駆け寄ってくる。
ロイズ「リコリスちゃん!大丈夫ですか!?」
クーロン「アンバーホールドの兵を借りてきた。ボルヴァルドがやべぇみてぇだが……」
「そ、そうだ!は、はやくアグナーにしらせ…ない…と…」
立ち上がるもそこで力尽き、ふらりと体が揺れる。慌ててロイズが受け止めるも、意識は暗闇に落ちていった……。
~あとがき~
今回は前回と前々回よりも長めになりました。
ロイズ君復活です。
ボルヴァルドでの会話と最後の山賊戦は随分改変というか、山賊戦はありませんのでご注意を。
ストームブリンガーの力の一片が解放されました。世界を滅ぼすだけの力を持つといわれるストームブリンガー後からはこれくらいではすみません。
そろそろのんびりした話を書きたいです。
戦闘描写とか難易度高すぎですだめです。
~ボルヴァルド地下墓地~
かび臭さが鼻を突く。
マントでぐいと鼻を覆い臭いを遮断しようとしたが、辺りに充満した臭いから鼻を守りきれない。
ゴラン「ここでお別れです、首長。」
階段を降りきって、一番後ろをついてきていたゴランが声をかける。
驚くヴァルフレッドとリコリス、ゴランはこちらをまっすぐ見据え決意の瞳を向ける。
ゴラン「上にはあまりにも多くの山賊たちがいます。ここにも雪崩れ込んでくるでしょう。これ以上同行する事はできません。ここに留まり彼らを食い止めます。」
ヴァルフレッド「だがゴラン、お前だけでは……。」
「そ、そうだぜ!オレなら山賊が何人いようと負けはしない!」
ゴラン「忘れたか!君の役目を。ここで君を逃がさなければ全ては無駄に終わるのだ!」
強い口調で制される。そしてヴァルフレッドに向き直り小さく礼をする。
ゴラン「議論をしている時間はありません!行ってください!」
扉が閉められる。ヴァルフレッドの決断は早かった。
ヴァルフレッド「…いいだろう。彼の死を無駄にしないためにも行かなければ。」
「で、でも!」
ヴァルフレッド「今は君の力を無駄遣いしていい場面ではない!」そういって手を引っ張る。
ゴラン「頼みましたよ。」一人ドアを前に剣を抜く。
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「ウオオオオオオオオオオオオ!!!」
ストームブリンガーを構え突撃する。
「は、はやすgぎゃあああああああ!!」
「そこをどけええええええええええええ!!!」
山賊「こ、こっちにくrぐぎゃああっ!」
行く手を阻むものは全て斬り捨てて行く。
ヴァルフレッド「……噂以上だな、旅人よ。」
荒く息をつく。
「はぁはぁ……身体は軽くなるはずなんだがな。これでも最近ついてきてない気がするんだ。」
「ヴァルフレッドさん、前には出るなよ。オレが、オレが全部やる……!」
(クフフフ、どういう風の吹き回しだ?あははは、楽しいねぇ!)
「うるせぇ!グダグダいってねぇで身体もっと動かさせろ!」
何人もの山賊を一太刀に切り捨てる。
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ヴァルフレッド「ああ神よ……あれは!?」
少し開けた場所に出る。するとヴァルフレッドは何かを見つめ、その場に倒れこみそうな声をあげる。
その視線の先には台座。その上には何も乗っていない。
横から視界に入ってくる影が見える。
真っ赤な血のような戦化粧にオーク特有の突き出た牙。
その牙の口は精悍にして獰猛な笑みを浮かべている。
ヴァルフレッド「コルグリム・・・・・・!」
コルグリムと呼ばれた男は大声で笑いながら、にやりと笑いかける。
コルグリム「ウラー!俺を止めにきたのなら手遅れだったな。鍵は俺のものだ。イングヴァールは神々の心臓を手に入れ、お前達すべてを支配することになる!」
そう一方的に言い残し去っていくコルグリム。
コルグリムの言葉を聞き驚愕の面持ちのヴァルフレッド。
ヴァルフレッド「そうか・・・!神々の心臓、イングヴァールはあれを見つけたに違いない。それこそがヤツが探していたものか。これはまずい、非常にまずいぞ!行こう、急がねば!」
急いで通路を抜ける。
山賊長「へっへっへ、ここは通さねぇぜ。」何人もの山賊の足音と怒声。
「ちぃ!邪魔だ!」
挑みかかってきた山賊を2,3人まとめて斬り飛ばす。
山賊長「まだだ!畳み掛けろ!」
こいつら、恐怖で動いているのか。
山賊の目にはすべからく恐怖心が見える。こちらに対する恐怖心以上の恐怖か。
「くそっ…・・・身体が……重い。オレはこんなところで立ち止ってられねぇえんだああああ!」
山賊に眼を向ける、数は10…20…30に近い。
「ストームブリンガー、力を貸せ!オレの体でもやる!オレに力をよこせええええ!!」
(まずは一つ契約成立だ。クフフ、ならばまずはオレの力の一片を貸してやろう。)
急に体が軽くなる。
(クフフ、久しぶりの開放だ。それには敵が少なすぎるなぁアハハハハハ!!)
手に握るストームブリンガーが唸る、自分の体でありながらストームブリンガーの意思が乗り移ったかのように剣が舞い踊る。
(我こそは剣の王、魂あるものならば私の前に立ち塞がる事はかなわぬ。私に歯向かうその悉くは死ね!)
ストームブリンガーが舞うたび首が飛ぶ飛ぶ飛ぶ。
剣閃が煌くたびに胴が真っ二つに斬る斬る斬る斬る斬る。
今まで以上の力にリコリス自身も高揚を感じる。
ヒャハッ!しねえぇぇええええ
意識はすべてストームブリンガーにのっとられそうになるも、ギリギリで踏みとどまっている状態。
近くにある全てを斬り殺し、その刃はヴァルフレッドにも向けられる。
(お前も死んでおけええええクフフ、ヒャハッ!)
「やあああめえええろおおおおおお!!!」
自分のいう事を聞かない体を無理やり止める。体中の筋肉がミシミシと音を立てている。
(チッ、無理やり私の制御を奪い取るか。まぁいい今日は満足だ。まずは契約の一つが終わったのだ、クフフ。)
はぁ・・・はぁ・・・
ヴァルフレッド「だ、大丈夫かね?しかし、この場所は……。」
辺りを見渡す。自分の斬り殺した山賊と……大量の樽。中身は……。
ヴァルフレッド「なんなんだこのオイルは?まさか……連中は町ごと吹き飛ばすつもりか!?出口はすぐだ、急ぐぞ!」
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~ボルヴァルド・秘密の抜け道出口~
秘密の抜け道を抜けた先は崖になっていた。
ヴァルフレッド「着いたな、ここから脱出できる。さぁ行け!ここから飛び降りるんだ、下は池だから安全だ。君が生き残るにはそれしかない。」
下を覗くと池が見える。十分な深さもありそうだ。
「よっし、なんとかなりそうだな。じゃあ一緒に!」
ヴァルフレッド「アグナーにイングヴァールが神々の心臓を狙っていると伝えてくれ。それで彼も分かる。」
「な、何言ってんだよ、あんたが伝えればいいだろ!」
しかしヴァルフレッドはこちらににこりと柔らかな笑顔を向ける。
「私はここで連中を食い止めねばならない。さぁ君だけでも!」
「で、でも!」
ヴァルフレッドはその手から魔力を放出し、出口を封じる。
その扉の向こうからドアを叩く音が聞こえる。
ヴァルフレッド「急げ!いつまでも、長くは食い止められない!」
逡巡する間にヴァルフレッドはこちらを強く崖の先へと突き飛ばす。
「ま、まってくれ、ここまで来て守れないなんて……!」
その言葉はヴァルフレッドに届いたか届かなかったか、崖の下へと落ちていく。
頭上で轟音。火薬が爆発したのだ。
その衝撃で態勢を崩すも池に落ちる。
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「ゲホッゲホゲホッ……くそっ。ひとまず体は無事か……。」
池からあがると体の異常を確かめる。
体中は痛いが致命傷はない、ストームブリンガーから無理やり体を奪い返した時の無理分くらいだ。
山賊長「へっへっへっへ、警戒してて良かったぜ。空からおこぼれが降ってくるなんてな。おい、もっと人数呼んで来い!」
「くそっ!何人たばになってもお前らなんて負けねぇぞ……命を無駄にするな!」
向かってくる数人を切り捨てる。ストームブリンガーから魔力が流れ込み活力になる。
ひときわ偉そうな男がにやりと笑う。
山賊長「お前さんの強さの事は知ってるぜ、でもこれならどうかな?」
山賊長が小さく呪文を唱える。
すると殺したはずの山賊がピクリと動き始める。
「ま、まさか・・・!?」
大声で笑いはじめる山賊長。
山賊長「そうよ、そのまさかよ!俺の得意なのは死霊術。殺しても殺してもこちらの手勢はへらねぇ、お前はいつまで耐えられるかな?」
恐怖で攻撃しか頭にない山賊と、痛みを感じない死者の兵。
気がつけば援軍が援軍を呼び、その数は数え切れない。
山賊長「お前の首を取れば、どれほどの報酬がもらえるかもわからねぇ。もしかしたら軍の大将軍だぜ!」
ジリジリと死体と生者が間合いを詰める。
(くそ、死体相手ではストームブリンガーも……。)
魂の吸えない相手ではストームブリンガーの力も極端に落ちる。
山賊長「ぐふふ、いたぶっていたぶって、最後にその首は俺の報酬になれええ!」
数十人と数十体を切り伏せた頃、さすがに身体のいう事が効かない。
水に濡れたままというのも身体を重くさせている。
さすがの山賊長も死体のまま動かない死体も増えてきたが依然、戦力は圧倒的。
――ここまでか、アグナーに知らせることもできないまま……――
山賊が下卑た笑みを浮かべながら近寄ってくる。
もう手に力は入らない。疲れが極限まで貯まりすぎた。
きっと仲間を殺しまくったんだ。怒り狂った山賊にボロ雑巾のように殺されるだろう。
あの山賊長の慰み者かもしれない、死体として。
くそっ……ボハン……。
思わず眼を瞑ってしまう。
???「そこまでだ!!」
凛とした声が聞こえる。
ハッっとそちらに視線を向ける。
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完全な奇襲を横合いから喰らい、山賊は完全に浮き足立っているようだ。
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その場にへたり込む。
強襲された山賊はすでに増援にかかりっきりだ。
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戦闘はすぐに終わり、クーロンとロイズが駆け寄ってくる。
ロイズ「リコリスちゃん!大丈夫ですか!?」
クーロン「アンバーホールドの兵を借りてきた。ボルヴァルドがやべぇみてぇだが……」
「そ、そうだ!は、はやくアグナーにしらせ…ない…と…」
立ち上がるもそこで力尽き、ふらりと体が揺れる。慌ててロイズが受け止めるも、意識は暗闇に落ちていった……。
~あとがき~
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